前の様式
舞台
フランス
第二帝政期、パリの都市改革を始め、社会構造の大きな転換があったフランス。都会人の新しい生活様式などが誕生しました。
背景
産業革命・資本主義の時代
19世紀後半、いよいよ「産業革命」の成果が浸透し始め、かつ「資本主義」の波風が立ち始めました。
近代への突入
「科学技術の飛躍的な進歩」・「都市部への人口集中」・「階級対立の激化」・「西欧の世界進出に伴う異文化交流」などが、人々の日常生活に大きな影響を与えます。
近代絵画の始まり
絵画においては、クールベやマネといった近代絵画の創始者によって、「アカデミーの古い伝統」やその「様々な約束事」から解放されて行きました。
特徴と画家
市民社会の成立
19世紀の社会変動を背景に、「市民社会」が成立。精神面においても、需要と供給の面においても、市民的な芸術が発展の機会を伺い始めます。
現実への関心
当然、彼らにとって関心があったのは「伝統」ではなく「日々の暮らし」でした。その要望に応えるためにも、絵画は「写実性」・「現実性」を高めて行きます。
「アトリエで生まれたフィクション」ではなく、「人生の真実」へと関心が移ったのです。
伝統との対決
しかし、これを絵画表現で実現するには、「伝統との対決」が不可避でした。
農民や労働者を主題として扱いながら、歴史画を頂点とする伝統的位階制度に挑戦したクールベは、まさにこの点において近代絵画の出発点ともいえます。
ギュスターヴ・クールベ|1819−77|フランス
彼は自然をありのままに描きました。鹿とその風景は、クールベが好んだ主題の一つです。
歴史上初めての個展
また、「現代生活への関心」・「社会的関心」を積極的な形で提出し、案の定サロンに拒絶されたクールベは、絵画史上初めて「個展」を開いた人物でもあります。
その個展は「ル・レアリスム」と命名され、パンフレットには「自分たちの時代の思想・風俗・生活を描くこと」と記されました。
クールベからマネへ
「画家は、画家である以前に一人の人間であり、自分が実際に生きているこの現実世界を描くことが新しい絵画の役割である」というクールベの姿勢は、マネに受け継がれ、それまでの伝統的な枠を取り払う方向へと絵画は導かれて行きます。
エドゥアール・マネ|1832−83|フランス
フォリ−=ベルジェールの酒場・模写
マネは、それまでの西洋絵画を支えていた「遠近法」や「精密な質的表現」を棄て、「大胆な構図」や「面としての色彩」の力を示すことに尽力しました。
アカデミーからの猛反発
当然、伝統的な明暗法を無視した鮮明な色面の配置は、当時の人々の憤激を買います。
古典作品との共存
同上
草上の昼食・模写
一方でマネは、ジョルジューネやラファエロ、アングルやゴヤなどの先例から学ぶことも蔑ろにはしませんでした。
彼はあくまでも、伝統的な形式の中に「現代の象徴」を盛り込んだのです。かくして古典的な伝統は近代絵画へと繋がっていきます。
参考文献
美術史〈西洋〉|編・中山公男 中森義宗|近藤出版社
西洋美術史|監修・高階秀爾|美術出版社
西洋絵画史入門史|著・諸川春樹|美術出版社
次の様式
西洋建築史年表
日本建築史年表
2025年6月23日
西洋絵画−オランダ・バロック
舞台 オランダ 16世紀末、「プロテスタント」勢力の強かったフランドル地方の北部にて、「スペイン領からの独立」を果たした新教国、オランダが誕生しました。 背景 イタリアからオランダへ輸入 イタリア起源のバロックは、国境を超えてオランダにも広がりました。 プロテスタントの国 オランダ共和国として独立を果たし、「東インド会社等の国際貿易」により、目覚ましい「経済発展」を遂げたオランダは、その経済力を背景にオランダ独自の「市民文化」を繁栄させていました。 「プロテスタントの国」であったオランダでは、「教会よりも ...
ReadMore
2025年6月23日
西洋絵画−イタリア・バロック
舞台 イタリア 16世紀後半のイタリア、おおよそ芸術活動の低迷期に入っていました。しかし、カラヴァッジョの活躍によって、ローマで新たな盛り上がりを見せます。その後、カラヴァッジョ様式は国際的な広がりを見せました。(本記事では、イタリアに比較的近しい展開を見せたフランドル・スペインも一緒に取り上げます) 背景 宗教改革に対抗するカトリック教会 カトリック協会の免罪符を直接のきっかけに、「宗教改革」が勃発。離れていった信者の心を取り戻すため、カトリック教会は「反宗教改革」に乗り出しました。 分かり易さを武器に ...
ReadMore
2025年6月23日
西洋絵画−ロマン主義
舞台 フランス 革命期から王政復古期にかけてのフランス。新古典主義が絵画の主導権を握っていた一方で、その「静的で厳粛な様式」は、人の心を真に動かす力に欠けていました。そんな中、絵画に再び「動き」を取り戻そうという流れが形成されます。 背景 ヨーロッパ各国の独立意識 「フランス革命」・「ナポレオンの侵略」という二つの事件をきっかけに、各国は「自我」に目覚めます。 古代ローマという西欧各国における「共通の祖先」から、「自国の歴史」・「風土」へと関心が移ったのです。 プロパガンダとしての絵画 ナポレオンの第一帝 ...
ReadMore
2025年6月23日
絵画−野獣派〈フォーヴィスム〉
著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」・「非営利目的」を徹底した上で、当記事の作成に望んでいます。 舞台 フランス 産業革命以来、急速な進歩によりもたらされた「世界の拡大化」は、多種多様な芸術運動の下、「専門化」・「分化」を押し進めました。そんな中で、新しい視覚体験が模索されます。そして、色彩の面で大きな変革が起きたのはフランスでした。 背景 野獣派結成のきっかけ ...
ReadMore
2025年6月23日
西洋絵画−ドイツ表現主義
著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記事の作成に望んでいます。 舞台 ドイツ これまでフランスに押され気味であまり活躍の場がなかったドイツでしたが、遂に自国を始点とする芸術運動の波風が立ち始めます。というのも、「近代化」を急激に進めて行ったドイツでは、それだけ社会に対する不満も生まれやすく、「苦しみを表現する画家」たちを産むには最適な土壌だったか ...
ReadMore