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舞台
フランス
絵画史の中でも、特にロココは時代区分の難しい様式です。そもそもロココとバロックの区分を認めない説もあります。そのため当ブログでは、ロココの特徴が最も顕著に現れている、フランスで展開されたロココのみを取り扱います。
背景
絶対王政に陰りが見え始める
「太陽王ルイ14世」は、神から与えられた王権の行使者としての役割を演じることの出来た「最後の王」でした。
それというのも、1715年に彼が他界すると、その絶対王政にも陰りが見え始め、「貴族等の側近勢力が台頭」して来たからです。
太陽王からの開放
彼らは、全てが太陽王ルイ14世に結び付いていた窮屈な状況からの解放を求め、「軽妙洒脱さ」や「自由奔放さ」、親しみやすい「日常性」や「感覚性」を好みました。
それに伴い、かつての「壮大さ」や「儀式性」は息を潜めます。
特徴と画家
優雅な作風が流行
偉大さよりも親密感が求められるようになったこの時代において、「人生の苦悩」や「敬虐な宗教的世界」とは無縁の、「優雅な愛の世界」をテーマとした、「雅宴画」が誕生します。
主導権は王から貴族へ
その創始者となったのはヴァトーです。彼の作品において、神や国王といった超越的存在は居場所を失い、逆に、貴族や富裕な中産階級の人々による「現実謳歌」で満たされています。
調和の取れた構図
アントワーヌ・ワトー |1684−1721|フランス
シテール島の巡礼・模写
「演劇的な舞台効果を狙った構図」や「軽妙な筆さばき」、「豊かな色彩」は、特に彼の夢幻的な作風を特徴付けています。また彼の本質として、人物と自然とを一つの調和律の中に描くという特徴は欠かせません。各々優雅で自由な姿勢を見せる群像は、見事に背景に溶け込み、構図のうるやかな旋律に同調しています。
古典主義の再来
ワトーの活躍もあって雅宴画が一世を風靡しましたが、18世紀後半頃には「古代ギリシャ」が再び盛り上がりを見せます。その背景には、ポンペイの発掘などがありました。
官能的な作品が喜ばれる
しかしその関心は、古典主義の厳しさというよりも、「官能的な魅惑」へと向けられます。その代表的な画家は、ブーシェです。ヴァトーのような、華やかでありながらもどこか哀愁の漂う作風に代えて、彼は「陽気な官能性」を打ち出しました。
フランソワ・ブーシェ|1703−70|フランス
模写
ブーシェにとっての芸術表現の焦点は、人間の内面よりも肉体性にあったへといえるでしょう。
ヴァトーの正統な後継者といえるのは、むしろブーシェの弟子であった、フラゴナールです。フラゴナールは、「優美な庭園での恋の戯れ」を「温かみのある色彩」で、かつ「速度感のあるタッチ」を駆使して描きました。
ジャン・オレノ・フラゴナール|1732−1806|フランス
ブランコ・模写
しかし、フラゴナールはロココ様式を代表する画家でありながら、「広大な空間」や「悲劇的感情」に対する彼の感覚の鋭さによって、次の時代を準備してもいました。
美術史〈西洋〉|編・中山公男 中森義宗|近藤出版社
西洋美術史|監修・高階秀爾|美術出版社
西洋絵画史入門史|著・諸川春樹|美術出版社
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2025年8月19日
西洋絵画−フランス・ロココ
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2025年8月19日
西洋絵画−フランス・バロック
舞台 フランス 太陽王ルイ14世が主権権を握る「絶対王政期」のフランスもまた、芸術の舞台となりました。自国の土壌で独自の様式を形成して行きます。 背景 フランスへ輸入 イタリア起源のバロックは、国境を超えてフランスにも広がりました。 伝統を守るフランス しかしフランスでのバロックは、主に前時代様式の否定として展開されて来た各地のバロックと異なり、「古典主義」的な傾向を保ちます。 それというのも、古典尊重のルイ王朝は「古代ローマを美術の範」としたからです。 王立アカデミーの設立 また、王立アカデミーの存在に ...
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2025年8月19日
西洋絵画−北方ルネサンス
舞台 アルプス以北 イタリアでルネサンスが盛り上がりを見せていたその頃、アルプス以北の国々でも独自の流れが形成されていました。イタリア・ルネサンスと区別して、北方ルネサンスと呼ばれます。 背景 市民階級の台頭 15世紀のフランドル地方では、「毛織物工業」と「国際貿易の振興」に伴って「市民階級」が台頭して来ました。 ありのままを描く それに呼応するように、「風景画」や「風俗画」なども受け入れられるようになります。 イタリア・ルネサンスでは「古典美」を理想の範としたのに対し、北方ルネサンスは自然や人間の姿を「 ...
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2025年8月19日
西洋絵画−初期ルネサンス
西洋絵画史の始まり 西洋絵画史の精神は「人間性の自覚」にある、というのが私の基本的な考えの立場です。そのため、当ブログでは、初期ルネサンスを西洋絵画史の始まりとします。 舞台 フィレンツェ 初期ルネサンスの舞台は、市民階級がいち早く台頭したイタリアの商業都市「フィレンツェ」です。 時代背景 キリスト教世界のほころび 中世ヨーロッパ社会は、これまで精神的にはキリスト教に支えられてきました。しかし、このキリスト教観というのは、人間を神の摂理にのみ従う下僕として、その限りにおいて人生の意義を認めるものでした。そ ...
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2025年8月19日
西洋絵画−盛期ルネサンス
舞台 ローマ 1492年、芸術文化を支えたロレンツォ・デ・メディチの没後、「フィレンツェ」は、ドメニコ会修道僧サヴォナローラの支配下に置かれ、やや停滞期を迎えます。その一方で、ユリウス二世に代表される辣腕の教皇の下で、「ローマ」は活気を取り戻しました。かくして、ルネサンスの舞台は「フィレンツェからローマへ」移ります。 背景 巨匠の時代 15世紀末から16世紀初頭にかけてのおよそ30年間、一般には盛期ルネサンスと呼ばれます。この時代は、「巨匠の時代」でした。 古代や自然の超克 彼らは自らの才能を自覚し、「古 ...
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