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舞台
フランス
産業革命以来、急速な進歩によりもたらされた「世界の拡大化」は、多種多様な芸術運動の下、「専門化」・「分化」を押し進めました。そんな中で、新しい視覚体験が模索されます。そして、色彩の面で大きな変革が起きたのはフランスでした。
背景
野獣派結成のきっかけ
1905年、パリのサロン・ドートンヌの一室に、若い画家たちが集いました。
「激く鮮烈な色彩表現」を得意とした彼らは、その画風に由来して「野獣」と形容されます。
20世紀最初の絵画革命
そんな彼らを発端として、20世紀最初の絵画革命が始まったのです。
自由な形態・平坦な画面・原色の使用
彼らは、「対象の写実的再現を望まない自由な形態」・「明暗法を捨てた平坦な画面」・「原色を大胆に使用した荒々しく派手な筆触」によって、美術界に衝撃を与えました。
特徴と画家
後期印象派を吸収
彼らは、ゴッホから「色そのものが人間の内的生命を表現する」ということ、ゴーギャンから「純化された形態と色彩によって自然の生命を象徴する」こと、セザンヌから「生きた色彩に秩序ある構造持たせる」ことを学び、そこから独自の様式を発展させました。
色彩を感覚表現として用いる
彼らは、色彩を「再現性」・「写実的役割」から解放し、直接感覚に訴える表現手段として用います。
計算された色面構成
野獣派の特徴がもっとも顕著に反映している画家は、マティスです。彼は「豪奢な装飾性」と「大胆な色面構成との統一による秩序」を求めました。明確な構図の中で、色彩が自己主張しています。
アンリ・マティス|1869−1954|フランス
コリウールの開いた窓・模写
彼は「物の形」よりも「原色の色彩世界」を謳美しました。「対象の再現」ではなく、「対象の表面から切り離された真理」の表現のために、色彩が用いられたのです。
マティスと同年代の画家、ボナールもまた、野獣派を代表する画家の一人です。彼はその才能から、「色彩の魔術師」とまで言われました。
日常生活を描く
ピエール・ボナール|1867−1947|フランス
浴槽の裸婦・模写
ボナールは「日常生活の何気ない一コマ」を切り抜き、それを色彩によって表現します。
それぞれの道を目指す
最初こそまとまりのあった野獣派も、次第に個々が独自の道へと進み始め、分裂を余儀なくされました。
表現主義に接触するルオー
なかでも、いずれの流派からも離れて、独自の表現主義を極めていった一人に、ルオーという画家がいます。
ジョルジュ・ルオー|1871−1958|フランス
ルオーは「妊婦」・「道化」・「キリスト」などを題材に扱い、重厚な画面によって「内面世界」の表現に向かいました。
軽妙さを追求するデュフィ
ラウル・デュフィ|1877−1953|フランス
薔薇色の人生・模写
また、「軽妙なデッサン」と「色彩」を駆使して風俗画家の持ち味を示した、デュフィもいます。
参考文献
美術史〈西洋〉|編・中山公男 中森義宗|近藤出版社
西洋美術史|監修・高階秀爾|美術出版社
西洋絵画史入門史|著・諸川春樹|美術出版社
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