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舞台
フランス
象徴主義は各国において多様な発展を遂げました。中でも大きな影響を与えたのは、フランスにおいて展開された象徴主義です。
背景
もう一つの芸術運動
19世紀後半、印象派が盛り上がりを見せていたその頃、並行して別の流れが形成されていました。
商業化する芸術
先導したのは、「科学」と「機械万能」という時代における「実利的なブルジョア精神」や、「芸術の卑俗化」に嫌気がさした画家たちです。
人間の内面を描く
彼らは、人間存在とその運命に関する「深い苦悩」・「精神性への欲求」・「内的な思考や精神状態」・「夢の世界」などを表現しようとしました。
特徴と画家
内面的な世界
印象主義の成熟とその定着のかたわらで、象徴主義と称される画家たちは「内面的な世界」に目を注ぎます。
幻想的な作風
ロマン主義的な「情熱」に代わり、抑圧された「静かな幻想」が彼らを彩りました。
抽象画の先駆け?
象徴主義においても特に重要な画家は、モローです。モローは「聖書」や「異教的な神話」を題材にしながら、「抽象的な観念」を描き出しました。
「魔性の女」像の形成
ギュスターヴ・モロー|1826−98|フランス
一角獣・模写
モローが作り出したサロメのような、邪悪で魅惑的な「魔性の女」像は、後代の絵画だけでなく、文学や音楽にも大きな影響を与えました。
後代に大きな影響を与えた画家としては、ルドンも外せません。
怪しげな色彩感覚
彼は「版画家」として、「白黒の世界」から出発しましたが、色彩の持つ怪しげな魅力に取り憑かれ、色彩の世界にやって来ました。彼の特徴は、「草花」や「ギリシャ神話」を題材に描く、パステルや油彩です。
女性と花が一体化
オディロン・ルドン|1840−1916|フランス
彼の作品では、「華麗な色彩」によって演出される、まるで夢を見ているかのような雰囲気の中で、「女性と花が一体化」しながら独自の世界が形成されています。
色彩革命を準備
また、色彩をそれ自体自立した存在として扱ったところに、「色彩革命」への先駆けが見受けられます。
参考文献
美術史〈西洋〉|編・中山公男 中森義宗|近藤出版社
西洋美術史|監修・高階秀爾|美術出版社
西洋絵画史入門史|著・諸川春樹|美術出版社
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西洋建築史年表
日本建築史年表
2025年8月19日
西洋絵画−立体派〈キュビズム〉
著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記事の作成に望んでいます。 舞台 フランス 産業革命以来、急速な進歩によりもたらされた「世界の拡大化」は、多種多様な芸術運動の下、「専門化」・「分化」を押し進めました。そんな中で、新しい視覚体験が模索されます。そして、「形態」と「構成」の面で大きな変革が起きたのはフランスでした。 背景 感覚派から知性派へ 野獣 ...
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2025年8月19日
西洋絵画−ヴェネツィア派
舞台 ヴェネツィア ローマで盛期ルネサンスが盛り上がりを見せていたその頃、東方とヨーロッパを結ぶ貿易で富を蓄積したヴェネツィアでは、別のルネサンスが誕生していました。一般に、ヴェネツィア派と呼ばれるものです。 背景 裕福な市民が誕生 ヴェネツィアでは、教会や市当局だけでなく、富裕で教養ある個人からの注文も盛んになりました。 個人受けする作品が流行 彼らは、伝統的な物語の著述よりも「感覚的な魅力」を要求します。 そのため、主題の重要性以上に、「鑑賞者が満足する」ような作品が好まれました。 特徴と画家 鮮やか ...
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2025年8月19日
西洋絵画−初期ルネサンス
西洋絵画史の始まり 西洋絵画史の精神は「人間性の自覚」にある、というのが私の基本的な考えの立場です。そのため、当ブログでは、初期ルネサンスを西洋絵画史の始まりとします。 舞台 フィレンツェ 初期ルネサンスの舞台は、市民階級がいち早く台頭したイタリアの商業都市「フィレンツェ」です。 時代背景 キリスト教世界のほころび 中世ヨーロッパ社会は、これまで精神的にはキリスト教に支えられてきました。しかし、このキリスト教観というのは、人間を神の摂理にのみ従う下僕として、その限りにおいて人生の意義を認めるものでした。そ ...
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2025年8月19日
西洋絵画−オランダ・バロック
舞台 オランダ 16世紀末、「プロテスタント」勢力の強かったフランドル地方の北部にて、「スペイン領からの独立」を果たした新教国、オランダが誕生しました。 背景 イタリアからオランダへ輸入 イタリア起源のバロックは、国境を超えてオランダにも広がりました。 プロテスタントの国 オランダ共和国として独立を果たし、「東インド会社等の国際貿易」により、目覚ましい「経済発展」を遂げたオランダは、その経済力を背景にオランダ独自の「市民文化」を繁栄させていました。 「プロテスタントの国」であったオランダでは、「教会よりも ...
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2025年8月19日
西洋絵画−フランス・バロック
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