西洋絵画−ドイツ表現主義

著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記事の作成に望んでいます。

前の様式

舞台

ドイツ

これまでフランスに押され気味であまり活躍の場がなかったドイツでしたが、遂に自国を始点とする芸術運動の波風が立ち始めます。というのも、「近代化」を急激に進めて行ったドイツでは、それだけ社会に対する不満も生まれやすく、「苦しみを表現する画家」たちを産むには最適な土壌だったからです。

背景

反写実主義

フランスで野獣派や立体派が活躍していた一方、ドイツにおいても反写実主義の動向が生まれていました。

感情表現に着目

色彩に注目した「野獣派〈フォーヴィスム〉」・形に注目した「立体派〈キュビズム〉」に対し、彼らは「感情表現」に注目します。

複数グループによる展開

それも単独でなく、「」「」「青騎士」などの複数のグループによって展開されて行きました。

特徴と画家

人間の内面を表現

外界の写実」を本性とする「印象派」への反動として、「事物」・「人間の内面」を重視する傾向が現れました。彼らは人間の内面に喚起する心情を、出来るだけ直接的に画面に定着させようと試みます。そのため、「主観的」な性格を強めていきました。

橋〈ブリュッケ〉

」のメンバーである、キルヒナーは、人間の心の奥底に潜むどろどろしたものを、「塗りたくったような色彩」で浮上させます。

ナチスからの迫害

エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナ−|1880−1938|ドイツ

模写

また彼は、時代の被害者でもありました。「頽廃芸術」に値するとして、ナチスからの迫害を受けたのです。

迫害の挙げ句、自死を選んでしまったキルヒナーですが、同じく「」に属するヘッケルは、その最中でも強く意思を保ち、長寿を全うしました。

社会情勢に対する危機意識

エーリッヒ・ヘッケル|1883−1970|

作品名不明[情報提供募集中]・模写

」は、「強烈な色彩表現」を追求する点では野獣派と共通するものの、上述からも分かる通り、「強い社会的危機意識」に裏打ちされていたため、彼らの色彩は「軽快」というよりも「深み」に満ちたものでした。

青騎士〈ブラウエ・ライター〉

青騎士」のメンバーであるマルクは、「現実の形態」から解放された、より「自由なフォルム」と「自由な色彩」を駆使して、精神的なものを表そうとしました。

フランツ・マルク|1880−1916|ドイツ

模写

マルクは「人間の醜さ」や「残酷さ」を嫌い、「動物の絵」を主に描きます。しかし皮肉にも、彼は戦争というまさに自分の嫌ったものによって命を落としました。ここに私たちは戦争の罪を見ることが出来るでしょう。

参考文献

美術史〈西洋〉|編・中山公男 中森義宗|近藤出版社

西洋美術史|監修・高階秀爾|美術出版社

西洋絵画史入門史|著・諸川春樹|美術出版社

↓建築史の解説もしています↓

西洋建築史年表

日本建築史年表

↓普段はこんな感じの絵を描いています↓

作品一覧

様式解説

1

西洋絵画史の始まり 西洋絵画史の精神は「人間性の自覚」にある、というのが私の基本的な考えの立場です。そのため、当ブログでは、初期ルネサンスを西洋絵画史の始まりとします。 舞台 フィレンツェ 初期ルネサ ...

2

舞台 ローマ 1492年、芸術文化を支えたロレンツォ・デ・メディチの没後、「フィレンツェ」は、ドメニコ会修道僧サヴォナローラの支配下に置かれ、やや停滞期を迎えます。その一方で、ユリウス二世に代表される ...

3

舞台 ヴェネツィア ローマで盛期ルネサンスが盛り上がりを見せていたその頃、東方とヨーロッパを結ぶ貿易で富を蓄積したヴェネツィアでは、別のルネサンスが誕生していました。一般に、ヴェネツィア派と呼ばれるも ...

4

舞台 アルプス以北 イタリアでルネサンスが盛り上がりを見せていたその頃、アルプス以北の国々でも独自の流れが形成されていました。イタリア・ルネサンスと区別して、北方ルネサンスと呼ばれます。 背景 市民階 ...

5

舞台 国際的な展開 イタリアに端を発したマニエリスムは、16世紀後半には国際的な広がりを見せます。 背景 反宗教改革に乗り出す カトリック教会が「反宗教改革」に乗り出す時代、「神秘的な表現」が求められ ...

6

舞台 フランス 太陽王ルイ14世が主権権を握る「絶対王政期」のフランスもまた、芸術の舞台となりました。自国の土壌で独自の様式を形成して行きます。 背景 フランスへ輸入 イタリア起源のバロックは、国境を ...

7

舞台 フランス 絵画史の中でも、特にロココは時代区分の難しい様式です。そもそもロココとバロックの区分を認めない説もあります。そのため当ブログでは、ロココの特徴が最も顕著に現れている、フランスで展開され ...

8

舞台 フランス 革命期からナポレオン時代にかけてのフランス。ナポレオンは絵画を、自らの理念の「プロパガンダ」として活用しました。そのため、絵画は記録的な意味合いを強めます。 背景 軽快なロココに対する ...

9

舞台 フランス 革命期から王政復古期にかけてのフランス。新古典主義が絵画の主導権を握っていた一方で、その「静的で厳粛な様式」は、人の心を真に動かす力に欠けていました。そんな中、絵画に再び「動き」を取り ...

10

舞台 フランス 第二帝政期、パリの都市改革を始め、社会構造の大きな転換があったフランス。都会人の新しい生活様式などが誕生しました。 背景 産業革命・資本主義の時代 19世紀後半、いよいよ「産業革命」の ...

11

舞台 フランス フランス美術は西洋絵画史の主要舞台の座を確立しました。イギリス風景画の伝統もスペイン画家ゴヤの系譜もフランスに吸収され、オランダ画家ゴッホもこの地での修行を得て覚醒しました。 背景 印 ...

12

舞台 フランス 印象派に続き、フランスが芸術の中心地として君臨しています。 背景 印象派の乗り越え 時代の寵児であった印象派も、1886年には最後の展覧会を迎え、いよいよ批判と反省の対象として乗り越え ...

13

一般に、スーラ・セザンヌ・ゴーギャン・ゴッホの四天王を総称して後期印象派と呼ぶことが多いです。しかし、当ブログでは個人的な趣きもあって、新印象主義(スーラ)・セザンヌ・後期印象派(その他の画家)という ...

14

印象派に並行して、象徴主義が発展 舞台 フランス 象徴主義は各国において多様な発展を遂げました。中でも大きな影響を与えたのは、フランスにおいて展開された象徴主義です。 背景 もう一つの芸術運動 19世 ...

15

著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」・「非営利目的」を徹 ...

16

著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記 ...

17

著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記 ...

-西洋絵画史