西洋絵画−立体派〈キュビズム〉

著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記事の作成に望んでいます。

前の様式

舞台

フランス

産業革命以来、急速な進歩によりもたらされた「世界の拡大化」は、多種多様な芸術運動の下、「専門化」・「分化」を押し進めました。そんな中で、新しい視覚体験が模索されます。そして、「形態」と「構成」の面で大きな変革が起きたのはフランスでした。

背景

感覚派から知性派へ

野獣派の「多彩色による画面構成」は、感覚的である故にやや不安定な感があったのに対し、立体派の知的な作業からなる「形態の画面構成」は、極めて合理的で堅固でした。

初期キュビズム

彼らは先ず、「自然」や「人間の姿」を「幾何学的な単純形態」に還元し、それを積み木のように組み立てて、秩序を構成しようと試みました。この時期は「初期キュビズム」と呼ばれます。

分析的キュビズム

そして次に、対象を一つの定められた視点から観察するのではなく、「あらゆる角度」から観察し、「多視点」からみた形態の特徴を、「幾何学的な形態」に還元しようと試みます。この時期は「分析的キュビズム」と呼ばれます。視覚的真実から知性による真実へと転向したのです。

総合的キュビズム

この徹底された対象の解体は、その挙げ句、現実との繋がりが遮断されるという危険性もはらんでいました。

そのため、現実との繋がりを保つことを常に意識しながら、それらを画面上に秩序だって再構成する能力が問われます。画家の並々ならぬ「構成力」が求められたのです。この時期は「総合的キュビズム」と呼ばれます。

特徴と画家

形の単純化

キュビズムの画家たちは、認識のぎりぎりのところで形を追求し、その結果として単純化された立体表現に辿り着きました。

「見る」を問い直す

また形の追求だけでなく、物を見るという行為をも問い直します。そして彼らは対象の一面だけを捉えて、そこに光や色彩を与える表現では到底真実には辿り着けないと考えたのです。

多角視点を採用

模索の結果、彼らは「あちこちに視線を動かして対象を認識する」という手法を生み出しました。

そのため、キュビズム作品に描かれているのは「画家の視線の動き」であり、鑑賞者はその視線の動きに合わせて、まるでその対象を眺め回します。

セザンヌの再発見

キュビズムを象徴する画家は、ピカソです。古代美術などに見られる「歪曲された形態」と、セザンヌに学んだ「知的構成」を一つに合わせることで、彼はそれまでになかった新しい絵画世界を実現しました。

対象を単純な立体に還元

パブロ・ピカソ|1881−1973|スペイン

ゲルニカ・模写

彼は、対象を立体の組み合わせのように分解して、そこに触覚的な感覚を盛り込みます。

複雑化するキュビズム

ピカソに並んで同時期、ブラックもキュビズムへと接近していました。後にピカソとブラックは協力しあいながら、対象を解体して画面上で再構成するという方向に舵を切ります。

ジョルジュ・ブラック|1882−1963|フランス

ギターを弾く男・模写

後に、ファン・グリスもキュビズムに仲間入りしました。

ファン・グリス|1887−1927|スペイン

パブロ・ピカソ・模写

キュビズムの末期には、行き過ぎた解体に歯止めをかけるべく、いかに原型を留めるかということも課題になって行きました。

参考文献

美術史〈西洋〉|編・中山公男 中森義宗|近藤出版社

西洋美術史|監修・高階秀爾|美術出版社

西洋絵画史入門史|著・諸川春樹|美術出版社

西洋建築史年表

日本建築史年表

2025年5月2日

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