作品№59

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多様性こそイデア

そうして、この偽物の世界から抜け出した先が、二枚目の絵です。要するに、この絵がイデアの世界なわけですね。ただし、この絵で表しているイデアは、私にとってのイデアの解釈なので、その点はご了承下さい。また、イデアの解釈は複数ありますので、気になる方は自分で調べてみるのも、面白いかも知れません。結論だけ先に申しておきますと、この絵で表しているイデアは、「差異」。誤解を恐れずにいうと、「多様性」です。多様性こそがイデアなのだ、これが私のイデアの解釈です。

ドゥルーズ的イデア

ここからは、もう少し詳しい話に入りましょう。

この絵を描くにあたり、私が参考にしたのは、ドゥルーズに由来するイデアです。主に「差異と反復」という本の中で、その理論が展開されています。ただ、この本、めちゃくちゃ難しいです。これまでの人生の中で、難しくて、読んでる途中で地面に叩きつけた本というのがいくつかあるんですけど、その中でも断トツ叩きつけた回数が多いです。いっそのこと燃やしてやろうか、と思ったくらいです。しかも、めっちゃ分厚いわけです。なので、正直言うと、私自身正しく読めているという保証はありませんし、本格的な解説もできません。あくまでも、私の解釈としてお聴き下さい。

出典元:Wikipedia

まず、「差異と反復」という本は、ハイデガーという人の書いた「存在と時間」を意識して書いたと言われています。ハイデガー、哲学に関心のある方でしたら、絶対に聞いたことのある名前ですよね。「存在と時間」という本も、全哲学書の中で五本指に入るといってもいいくらい重要な本です。ただ重要な反面、こちらもすごい難しい本ですので、正直字を追ったぐらいで、ちゃんと読み込めてはいません。もちろん、この本も何度も地面に叩きつけましたよ。

なので、代わりといっては何ですが、ハイデガーの弟子であった田辺元さんや、その教え子の高坂まさあきさんが書いた解説書を参考にしながら、私なりにくみ取ったことを紹介させて頂きます。この「存在と時間」でもっとも重要なテーマ、それは原存在です。普通存在というと、たとえば手があって、ものを掴んでいる自分、このようなものを思い浮かべますよね。でも、この自分という存在を突き詰めていくと、自分がこの肉体を持って生まれてくる前の自分は一体何だったのか?あるいは自分が死んだあと、自分の存在はどうなるのか?っていう疑問が生まれてきます。このように、単なる自分じゃなくて、もっと深いところにある自分を突き詰めてみよう、それがこの本の目的であるわけです。そして、ドゥルーズがこの「存在と時間」を意識して「差異と反復」を書いたということは、「差異と反復」でも、存在そのもの、つまり原存在を突き詰めようとしている、と言えるでしょう。では、存在とは何か、ドゥルーズはここに、差異という言葉をあてがいました。存在とは差異なのだ。

仮に、この存在、厳密にいうと原存在が、本当の存在、すなわち、真理であるとするならば、何となく、「イデア=多様性」という方向性も見えてくるのではないでしょうか。

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様式解説

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8

舞台 フランス 革命期からナポレオン時代にかけてのフランス。ナポレオンは絵画を、自らの理念の「プロパガンダ」として活用しました。そのため、絵画は記録的な意味合いを強めます。 背景 軽快なロココに対する ...

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11

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一般に、スーラ・セザンヌ・ゴーギャン・ゴッホの四天王を総称して後期印象派と呼ぶことが多いです。しかし、当ブログでは個人的な趣きもあって、新印象主義(スーラ)・セザンヌ・後期印象派(その他の画家)という ...

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著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」・「非営利目的」を徹 ...

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著作権に対する配慮:当記事に掲載している模写作品の中には、著作権保護期間中のものが含まれています。そのため、「引用元(元絵)の明記」・「引用の必要性」・「画像は自前で用意すること」を徹底した上で、当記 ...

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-令和四年作品, 哲学